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イジュと高倉
イジュと高倉
説明


・イジュはツバキ科ヒメツバキ属の常緑高木です。奄美大島から南西諸島に広く分布し、とくに古生層粘岩地層に自生しています。6月頃、白い梅に似た花を咲かせます。幹の材質が堅いため、建築などの用材に利用されるほか、樹皮からはタンニンがとれ、魚をとるのに使われることもあります。

・このイジュを用いて建られているのが、高倉です。高倉は古代日本においては、全国各地で見られた高床式の倉庫で、起源は台湾やフィリピンなどの東南アジアだとされています。現在の日本で、実際に使用されているのは、奄美だけだといわれています。

・高倉は叉首組(さすぐみ)の屋根架構に、茅を葺いた屋根の屋根裏部分を倉庫に利用します。イジュの幹をカンナでよく削って磨かれた柱は、ネズミが登ることができません。通気性が良く、湿気を防ぐので、カビや腐敗を防ぐことができます。茅葺の屋根は、通常の屋根よりも肉厚になっているため、強い太陽光を防ぎ、熱からも守ることができます。また、柱組に釘を一本も使わないため、火事や台風に襲われても、横棒を抜くだけで簡単に倒すことができます。中には、穀物をはじめ、黒砂糖、味噌、魚介類、豚肉、衣服などを保管していました。

・背の高い床下部分は、強い日差しや雨などをしのぐことができるので、快適な作業場として利用されました。それ以外にも晩酌をしたり、唄遊びや語らいの場としても使われ、また子どもたちにとっても身近な遊び場として親しまれています。

・高倉を新築する際には、「カフカ」と呼ばれる取り決めに則って、日取りを決めていたそうです。「カフカ」とは、陰陽道に定められた日にちの種類で、この日には生き物の生命力を封じる力(生き物の害を防ぐ力)があるとされています。これに則って高倉を新築することで、ネズミなどの害から高倉を守ることができるとされています。


  • このWebコンテンツは、財団法人奄美文化財団が、平成22年度子どもゆめ基金(独立行政法人 国立青少年教育振興機構)の助成金の交付を受けて制作したものです。
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